平成22年度の研究計画は(1)補強用の高強度ボルトとしてこれまで半ねじを使用してきたが、全ネジを使用してその変形能力の向上を確認する、(2)現場施工を想定してアンカーボルトの補強作業(孔あけ、ねじ切りなど)を行い、現場施工の可能性と補強したアンカーボルトの性能を確認することであった。(1)については14T相当で必要サイズの全ねじの高強度ボルトは市販されていないことから計画した性能を有する高強度ボルトの製作に手間がかかったことより、本年度内の実験実施はできなかった。ただ、半ねじの高強度ボルトでも十分な補強効果が得られることが知られており、本補強方法の実現に支障はない。(2)についてはH形鋼柱に種々のアンカーボルト孔をあけたベースプレートを溶接した柱脚を作成し、それにアンカーボルトを締め付けた状態(現場を想定)でアンカーボルト頭部より孔をあけ、ねじを切って高強度ボルトを埋込補強し、工場製作などとの耐震性能の比較を行った。その結果、以下のことが知られた。 (a)ボルト孔の位置が柱からドリル本体幅の半分程度離れていれば、現場においても補強の作業は十分可能である。ただし、孔あけ作業では孔の中心が斜めにずれるので注意が必要である。通常の作業では、孔先端のずれは2.5mm以内である。(b)現場を想定して補強しても、工場(旋盤などを使用して)で補強したものと耐震性能に大きな差は見られない。すなわち、孔あけで孔先端のずれが2.5mm以下の場合は、その性能は工場製作と遜色ないことを引張試験により確認した。また、試行錯誤の段階で孔のずれが4mmの場合では2.5mm以下の場合より、性能はやや劣るが予測式による評価結果を下回ることはなかった。
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