平成23年度は、交付申請書に示した研究計画の通り、(1)冷間成形角形鋼管の一定荷重・漸増温度下の力学的挙動実験(非定常温度実験)と、(2)冷間成形角形鋼管の高温時ならびに加熱後冷却時の加力実験の数値解析を実施した。 (1)の実験では3種類の幅厚比を設定した短柱圧縮試験体と柱試験体に対して、それぞれ3水準の一定軸荷重を設定し、温度上昇速度5℃/分で試験体が崩壊するまで加熱した。この実験(非定常温度実験)の結果と平成22年度までに実施した一定温度下の加力実験(定常温度実験)との結果を比較検討することによって、短柱試験体の局部座屈挙動と柱材の曲げ座屈挙動に関する実験的知見が得られた。ここでの最も重要な結果は、短柱圧縮試験体の定常温度実験におけるひずみ塑性率と非定常温度実験におけるそれがほぼ同じであるという実験結果が得られたことである。この結果を用いて柱試験体の実験挙動を分析することにより、柱試験における曲げ座屈と局部座屈の連成座屈挙動を詳しく分析することができる。この結果は、耐火試験として一般に行われている載荷加熱試験だけからは得ることができない、今までに明らかにされたことのない極めて重要なものである。 (2)の数値解析では、局部座屈を考慮できるように汎用有限要素法ABAQUSを用いた。解析モデルはシェル要素(S4R)で、材料データは引張試験と短柱圧縮試験の結果から構成した熱弾塑性モデルである。 一定温度状態の解析では、実験値とほぼ対応する結果が得られたが、500℃以上では解析値の局部座屈発生は実験値のそれよりもやや早く、この温度域における硬化係数の設定には注意が必要である。また、加熱後冷却時の解析では、焼鈍により復活した降伏棚が局部座屈発生に関係し、ここでも硬化係数の取扱いには注意が必要である。以上のように数値解析法の幾つかの問題点を明らかにすることができた。
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