研究概要 |
建築物の損傷を適切に評価できる地震動の強さとしてどのような指標が適切であるかを明らかにするために、1自由度系や多自由度系の弾塑性構造物について、多くの地震動を用いて時刻歴応答解析を行い、建築物の最大応答と地震動の力積に基づいた指標との相関の程度を調べた。 地震動は最大加速度が3m/s/s程度以上を記録した国内外の水平方向の地震動を用いることにして、強震ネットで観測された被害地震の地震動を中心に米国と台湾の記録を含む総計120個の地震動を用いた。建物モデルは基本として弾塑性1自由度系モデルを用い、多自由度系については3層と5層として各層がバイリニア復元力特性で層せん断力係数がAi分布に従う建物モデルとして、1次固有周期は、0,1s〜1.Osに設定し、限界となる目標塑性率を2と4の2つの場合について解析した。 地震動強さを基準化する指標としては、地震動をパルスと見なしたときの時間積分である力積に基づいた指標として、最大力積値と地動最大加速度に基づいたパルスとの最小値で定義した修正最大力積値およびパルスを半正弦波と見なしたときの最大応答に基づいた補正最大力積値の2つの指標を提案して、それらについて検討した。 解析の結果,補正最大力積値や修正最大力積値についてどちらも固有周期が0.3s以下の短周期域では相関係数が0,7程度と低くなる場合も見られるが、固有周期の全範囲で相関係数がほぼ8割以上と高い層間が得られた。地震動強さの基準化にはどちらも適切な指標であることが分かったが、補正最大力積値は算定が簡単でないことから簡単に算出できる修正最大力積値が地震動を基準化するのには便利であることが分かった。
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