研究概要 |
平成22年度は,平成21年度までのデータに1年分の追加データを加え,風況と飛来塩分発生量との関係を考察した。ここでは,対象海岸から離れた距離にある気象庁の風況観測データと,海岸付近にある飛来塩分捕集器の近くに設置したWeb気象観測装置による風況観測データによる検討を行った。その結果,平均風速と飛来塩分量の関係よりは,平均風速に風の吹いた時間を考慮した積算風量の方が飛来塩分量との相関は高いことが分かった。また,海岸に近いほど,飛来塩分量と積算風量の相関は高いことが確認された。なお,飛来塩分捕集器の設置位置と距離の離れた気象庁の風況データでは相関は低い結果となったが,飛来塩分捕集器近くに設置したWeb気象観測装置による風況データとは相関が高い結果になった。このことより,任意の海岸において風況を推定する手法の確立が,飛来塩分の発生量推定において重要であることが分かった。 任意の海岸における風況を推定するために,領域気象モデル(WRF)による検討と空間補間法(IDW)による検討を,過去3隻間の測定データで行った。上記の2方法と実際のWeb気象観測装置による風況データとを比較したところ,上記の2方法は,推定精度を上げるための工夫が必要であることが分かった。さらに,本研究では内陸への飛来塩分の輸送量を移流拡散方程式に基づいて解くプログラムも作成しており,平成23度は測定結果との比較検討を行う予定である。 コンクリート試験体を用いて飛来塩分量とコンクリート中の塩化物イオン量を検討したところ,両者には相関が認められた。今後も観測・測定を続け,この関係性を定量的に明らかにしたい。 飛来塩分の発生量と内陸への輸送量を明らかにし,さらにコンクリート中への塩化物イオン量の浸透量を定量化することで,各種塩害環境下における腐食劣化予測の精度が高まることが期待される。
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