研究概要 |
本年度(平成23年度)は,風況と飛来塩分発生量に関する調査・解析,飛来塩分とコンクリート中に浸透する塩分量の関係および遮塩材料の効果について検討した。 風況と飛来塩分発生量に関しては,飛来塩分捕集器を設置した対象海岸から距離の離れた気象庁の風況観測データと,飛来塩分捕集器の近くに設置したWeb気象観測装置による風況観測データによる検討を行った。その結果,飛来塩分捕集器の設置位置から距離の離れた気象庁の風況データでは相関は低い結果となり,飛来塩分捕集器近くに設置したWeb気象観測装置による風況データの相関が高い結果になった。この結果より,任意の海岸において風況を推定する手法の確立が,飛来塩分の発生量推定において重要であることが分かった。また,海岸における平均風速と飛来塩分量の関係よりも,積算風量の方が飛来塩分量との相関は高いことが確認された。 そこで,任意の海岸における積算風量を推定するために,領域気象モデル((1)WRF)による検討と空間補間法((2)IDWおよび(3)クリギング法)による検討を過去4年間の観測データを基に行った。なお,クリギング法は本年度に新たに加えた手法である。上記の3方法と実際のWeb気象観測装置による観測データとを比較したところ,上記の3方法は,いずれも推定精度を上げるためのさらなる工夫が必要であることが分かった。 コンクリート試験体を用いて飛来塩分量とコンクリート中に浸透した塩化物イオン量を検討したところ,両者には相関が認められた。これを基に飛来塩分量からコンクリート表面における浸透塩分量(フラックス量)を境界条件として用いることが確認できた。この境界条件を用いることにより,より合理的な塩分浸透解析が可能になる。さらに,塩化ビニル樹脂サイディング材を遮塩材料として用いる事でコンクリート中への塩分浸透を大幅に低減できることが確認された。
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