平成24年度は,これまでの測定データを用いて,風況と発生飛来塩分量に関する定式化を行い,海岸から内陸へ輸送される飛来塩分輸送量の推定式を提案した。また,この飛来塩分輸送量の推定式と地図情報を組み合わせて,飛来塩分量を地図上に示すことのできるシステムを作成した。 風況と発生飛来塩分量に関しては,平成24度以前にも検討を行っているが,平成24年度に測定されたデータも加えて再度検討を行った。以下に,得られた知見をまとめる。 (1) 海岸で発生する飛来塩分量と風況との相関について検討したところ,その対象海岸に近い場所での風況が最も相関が高いことが分かった。(2) 上記(1)の結果を受けて,任意海岸の風況を予測する手法として,空間補間法IDWおよび領域気象モデルWRFによる検討を新たなデータを加えて検討したが,良好な結果は得られなかった。一方,対象海岸から近く,かつ,似たような地形の地点で風況は,対象海岸の風況と相関が認められた。したがって,IDWには距離の重みだけでなく,地形の重みも考慮できるような工夫が必要と考えられえる。また,WRF については,地形や気象データ等の入力値の高精度化の必要があると思われる。(3) 発生飛来塩分量と積算風速および平均風速の相関を検討したところ,積算風速の方がわずかに発生飛来塩分量との相関が高かった。 飛来塩分輸送量の推定式および地図情報と組み合わせシステムに関しては,以下の知見が得られた。 (1) 風況のみならず,海岸地形によっても発生飛来塩分量が異なるため,海岸地形による影響を推定式に反映させたところ,推定式の精度が改善された。(2) 飛来塩分輸送量の推定式を地図情報と組み合わせることで,海岸からの距離や標高等を考慮した飛来塩分Mapが作成できた。
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