市街地に設計・建設される高層集合建物には、整形立面形状のものに加えて、建築法規規制によるセットバックした立面形状を有する高層集合住宅が多く見られる。そこで本年度は、(1) セットバック立面形状を有する高層免震建物の隅角部アイソレータの地震応答性状と整形立面形状免震建物のそれとを比較検討し、(2) 整形及びセットバック立面形状を有する高層免震建物のアイソレータの引き抜きに関する強震動水平成分と上下動成分の強さの評価尺度に関する提案を行い、以下の成果を得た。 (1) 強震動が作用するセットバック高層免震建物の隅角部低層部分アイソレータには、隅角部高層部分アイソレータに比べ概してより大きな引張面圧及び圧縮面圧が作用し、また整形立面形状を有する同規模の高層免震建物の隅角部アイソレータに比べてより大きな引張面圧及び圧縮面圧が作用する傾向にある。 (2) 高層免震建物において、隅角部低層部分アイソレータに作用する引張面圧σt≒1N/mm2^を超えるような強震動では、上下動によるアイソレータの引き抜きに及ぼす上下動の影響は水平動よりも概して大きい。 (3) アイソレータに生じる強震動の引き抜き強さを簡便に評価する尺度として、上下動成分については上下動実効加速度(0.1秒~0.3秒の周期帯域のバンドパス・フィルターを施した上下動最大加速度振幅値)、水平動成分については水平動やや長周期実効加速度(2秒~6秒の周期帯域のバンドパス・フィルターを施した水平動最大加速度振幅値)を提案した。この二つの評価尺度を用いて、アスペクト比3~4程度の高層免震建物では上下動実効加速度が200cm/s^2を超え、また水平動やや長周期実効加速度が70cm/s^2を超えると、低層部分アイソレータに1N/mm^2を超える引き抜きが生じる可能性が高くなる。
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