日本において近い将来に高い確率で発生が予想されている地震は、東海・東南海・南海連動地震、首都圏直下地震及び仙台周辺域に発生する地震である。また、近い将来に高い確率で発生が予想されているわけではないものの、社会的に重要性の高い建築構造物(例えば地域の基幹病院建物)の設計にあたって想定されるべき地震(例えば首都圏における南関東地震、近畿圏における上町断層地震、福岡市における警固断層地震、仙台市における長町・利府断層地震など)も地震工学的に重要な想定地震である。そこで、仙台本町、東京丸の内・新宿、横浜みなとみらい、名古屋駅前地区、大阪梅田及び福岡天神の7地区を対象として、それぞれの想定地震による模擬地震動を作成し、高層免震建物(アスペクト比2.5~5.0)の3次元立体骨組振動系モデルによる地震応答解析を行った。 これによれば、東京、横浜、名古屋及び大阪の対象サイトではM8クラスの地震及び巨大連動地震によりアスペクト比4.5~5程度以上の高層免震建物の隅角部アイソレータに引き抜きが生じる可能性が高いこと、仙台、東京、大阪及び福岡におけるM7クラスの直下地震では水平動による付加軸力が小さくとも上下動成分による影響が支配的となり、大きな引き抜きを生じさせる可能性が高くなること、長町・利府断層地震や警固断層地震によっては、アスペクト比4.5以上では隅角部アイソレータに過大な引張面圧を生じさせる可能性が高くなることを示した。また、免震建物の設計におけるアイソレータの選定に当たっては、対象サイトの地震基盤より上の基盤構造によるやや長周期帯域の増幅特性に留意して選定することが望ましいことを指摘した。
|