研究概要 |
本研究は,直交部材が偏心して接合する鉄筋コンクリート造(RC)外柱の柱・梁接合部,特に直交梁が接合しない部分のせん断挙動を明らかにし,構造性能評価(せん断設計)手法の提案を目的としている。 2008および2009年度は,柱・梁接合部区間および柱部材の構造性能に各要因が及ぼす影響について把握する実験を実施した。具体的には,直交梁の偏心位置および面内梁の接合状況によって,梁接合区間および部材の構造性能が変化し,梁接合区間のせん断破壊が誘発される条件について顕在化した。また,梁接合区間に配筋した柱せん断補強筋の補強効果,および,面内梁の主筋量がせん断挙動に与える影響について把握した。 2010年度は,上記の実験より得られた資料を用いて,柱部材一般部から梁接合区間に連続する部位のせん断挙動とせん断補強手法に対して検討を行った。具体的には,以下2点を実施して検討を進めた。 ・2009年度に実験を実施した試験体の柱梁接合部の斫りを実施して,面内梁定着部近傍における最終破壊状況を確認し,応力伝達について考察した。 ・2008年度・2009年度に実施した実験資料を考察・検討を進め,柱部材一般部から柱梁接合部内に至る部位の内部応力状態(せん断抵抗状態)およびせん断補強筋の効果について把握した。 これらより,(1)直交梁および面内梁の接合位置・梁主筋量によって梁が負担するせん断力(柱に与える逆せん断力)が変化するため,梁接合区間内の柱負担せん断力が変化し,柱の見かけのクリアスパンも変化すること,(2)せん断設計では,梁接合区間内で柱負担せん断力が一般部と同様となる区間を明確化し,その区間,および,柱負担せん断力が大きく変化する位置に対し,せん断補強を行うことが必要・効果的であることを顕在化し,せん断設計手法構築のための基本的な考え方を纏めた。
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