研究概要 |
本研究では、RC造梁部材におけるヒンジ回転限界(靭性能評価法・せん断設計法)について評価する手法を構築することを目的としている。平成20年度の研究等により、複筋比(γ)が1.0未満の梁部材は、複筋比1.0の梁部材よりもコンクリートの圧壊を早期に誘発し、主筋の座屈を誘発していることを把握している。このため、材端ヒンジの回転限界を1)材端ヒンジ部のせん断破壊によりヒンジ回転限界が決定される場合(主としてγ=1.0)、2)材端主筋の座屈によりヒンジ回転限界が決定される場合(主としてγ<1.0の場合,またはせん断補強筋間隔が広い場合)、の2つで決定される場合に分類して、評価方法の構築を行う。 試験体および実験方法は、平成20年度と同一とし、曲げ・せん断実験を3体実施した。実験要因は、複筋比(γ)0.5で、せん断補強筋間隔およびせん断補強筋比(Pw)を実験要因とし,せん断補強筋強度(wσy)を変化させることにより,せん断補強量(Pw・wσy)を同一とした。既往の研究結果も併せて、圧縮側コンクリートの負担状況の差異、コンクリートの圧縮拘束状況と主筋座屈長さの差異を調べた。 本実験範囲内において以下の知見を得た。 (1)複筋比が1.0未満の梁部材において、せん断補強量が同程度の場合であっても、せん断補強筋間隔が大きい場合、主筋の座屈長さの違いおよび主筋の圧縮力負担の違いの影響により、早期にヒンジ回転限界が決定される。 (2)複筋比が1.0未満の梁部材においても、せん断耐力にせん断補強筋間隔の影響を考慮した評価式を用いたせん断余裕度によってヒンジ回転限界を評価することが可能である。
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