研究課題
世界で有数の大地震リスクをかかえる日本において、建築物の構造設計における目標性能設定は建築主の生命と財産をかけたリスクの意思決定でもある。しかし構造設計では、建築主と対話することはまだまだ少ないのが現状である。これからの設計が双方の合意のもとで行われるよう、リスクコミュニケーション手法の構築を目的として、平成21年度には、次の研究を実施した。1.建築構造分野におけるリスクコミュニケーションの現状把握と課題の整理建築構造分野ではリスクコミュニケーションは、困難であるとの理由から実現されていない。しかし構造設計者による集合住宅の構造性能説明が実施されるようになってきている。どのように対話を進めているかについて、関係者の立場を整理し、現状把握を行った。それらに基づき、リスクコミュニケーションの実施・手法構築に向けての課題を整理した。2.リスクコミュニケーションに関する市民の意識分析昨年度の調査結果から、建築主がどのようなリスクコミュニケーションを要望しているか詳細な分析を行い、研究成果を学術論文にまとめて、発表した。3.確認審査機関に対する実在建物耐力調査および構造設計者の対話用資料の作成リスクコミュニケーションの実施に向けては、建物の構造性能と性能上昇にかかわるコストの関係を示しながら、建築主への説明方法、意思疎通・対話の方法を構築していく必要がある。現状の建物が有している建物耐力を把握すべく、審査機関を対象とした調査を行い、実建物の設計耐力が対数正規分布に適合していることを明らかにした。これに基づき、構造設計者が説明用資料として活用できる説明ツールの作成を開始した。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
日本女子大学紀要 家政学部 第57号
ページ: 131-140
日本建築学会構造系論文集 第644号
ページ: 1705-1713
Reliability and Risk of Structure, Infrastructures and Engineering Systems, ICOSSAR
ページ: 858-864