強震動予測に欠かせない不規則領域を含む堆積盆地構造推定のための微動の適用性について観測及び数値計算に基づいて調査研究を行ってきた。1)盆地端部では平行成層構造が必ずしも仮定できないため、不規則構造モデルにおける微動場の3次元差分法による計算を行った。さらに、2)これまで多く適用されてきた平行成層モデルによるH/Vスペクトルとの比較から、後者のモデルの適用限界について考察を行った。 上記の1)に関して以下のことが分かった。H/Vスペクトルの卓越周波数付近のスペクトルのピーク形状が不規則構造領域上では不明瞭となり複雑となった。微動の主要なエネルギー成分が盆地構造へ到来する方向が異なると、H/Vスペクトルの卓越周波数とピーク値が盆地中央部以外で20%程度変動した。平行成層モデルよるにレイリー波のH/Vスペクトルの卓越周波数と比較した結果、上記の不規則構造領域上やその近傍において20%程度の範囲で差が生じた 上記の2)に関して以下の調査を行った。大阪平野における既往の微動観測があまり行われていない泉北地域及び新淀川流域において単点微動観測を実施し、丘陵部および伏在断層帯域の基盤面形状が不規則な領域におけるH/Vスペクトルの空間変動を調べた。その結果、断層帯近傍において微動水平振幅の方位依存性を観測と数値計算において確認した。これらの結果は、既往の平行成層モデルでは再現ができないことであり、地下構造の3次元モデル化に基づく微動を用いた不規則構造推定手法の高精度化に寄与できるものと考えられる。
|