研究概要 |
本年度は,鳥取県中部地方の大工・左官による壁幅の異なる4種類の土塗り壁を対象として正負繰り返し加力実験を行った.試験体は,柱間隔1P(910mm)を基準として,0.5P,2P,3Pの計4種類を作製した.0.5Pは,通常,袖壁として耐力に算定されないが,伝統構法木造建物を限界耐力計算によって構造設計する場合,袖壁の影響を無視することはできないと考え,単体での実験を計画した.試験体高さは,土台から桁まで2730mmである.貫は3段で,断面は18×105mmである.貫穴は柱心に開いているが,貫の幅18mmより数ミリ大きく開けられ,薄い板状のくさびで埋められている.試験体に用いた木材は徳島県産のスギ材で,柱,土台および桁材はE70以上である.その結果,タイロッドや鉛直荷重を作用させない場合,1/30radを超える変形では柱脚が容易に引き抜ける,2P以上の幅があれば柱脚が引き抜けず持ちこたえることが期待できる.最大耐力は,壁幅にほぼ比例する,小舞竹の間隔が小さい場合,荒壁の一体性が不十分となって壁土が大きく剥落する可能性がある,ことが判明した. 本実験により,竹小舞の間隔や設置,加力方法の問題点が明らかになったので,2009年度に継続して実施する実験では,竹小舞の間隔を30mm程度とし,鉛直荷重を作用させた実験とするように計画中である.また,壁土の材料試験(圧縮試験)を行った.試験体は,直径5cm,高さ10cmの円柱である.荒壁土の最大耐力は,0.3〜0.55N/mm^2であり,中塗土の最大耐力は,0.5〜0.9N/mm^2であった.
|