研究概要 |
木造土塗り壁の正負繰り返し加力実験を行った結果,以下のことが確認できた ・タイロッドや鉛直荷重を作用させない場合,1/30radを超える変形では柱脚が容易に引き抜ける.ただし,2P以上の幅があれば,柱脚が引き抜けず持ちこたえることが期待できる. ・最大耐力は,壁幅にほぼ比例する. ・小舞竹の間隔が小さい場合,荒壁の一体性が不十分となって壁土が大きく剥落する可能性がある. ・今回の実験では,土塗小壁と土壁の最大耐力の加算則が成り立つ. (2)壁土の材料試験結果を図5,6に示す.壁土材料強度は,年度によって大きく異なった.特に荒壁土は,2倍以上の強度差が生じた.また,中塗り土は,最大圧縮強度は同程度であったが,割裂引張強度は1.5倍の差が生じた. (3)数値解析に実大試験の追試は,(2)壁土の材料試験結果を受け行った.結果を図7に示す.図より分かるように,解析結果は,実大実験結果に比して,1caseを除いて初期剛性が小さい(1/3~1/2程度),1caseを除いて最大耐力が低めである(0.7~0.9倍程度),破壊後に急速な耐力低下が生じるCaseを模擬していない,などの差を生じている.これは,実大実験の最終破壊形式が「柱脚の引抜け」であり,柱脚の引抜け耐力がばらつくこと,および,引抜け時の荷重-変位曲線を完全弾塑性に置き換えた単純化した解析であったこと,が原因である.従って,実験自体が,当初の予定した壁土の破壊が主となる破壊形式では無かったため,結果として「土壁ラーメン架構」の耐力機構解明には至らなかった.また,最終変形時には,壁土の小舞からの剥離が生じており,土壁の終局耐力維持に課題を残した.
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