建物の耐震安全性を高精度に評価する方法としては、地盤-基礎-建屋を一体としてモデル化した、非線形3次元FEMによるシミュレーション解析が考えられる。しかしモデル全体が巨大となるため、現在の高い計算機能力を持ってしても実用性には課題があった。この問題を解決するための方法として、地盤モデルの波動境界を高精度化し、解析領域を縮小することが考えられる。本研究はこれまで振動数領域の解析に限られていた高精度の波動境界であるエネルギー伝達境界を時間領域に変換し、現実の建物の耐震挙動評価に適用するものである。これにより、境界の内部領域は時間領域での解析が可能となるため、建物や近傍地盤の非線形性を考慮した解析が可能となる。 これまでの研究では、2次元および3次元問題において時間領域伝達境界の適用性の検討を行い、良好な結果を得てきた。そこで本年度は、伝達境界自身が非線形化する場合(非線形エネルギー伝達境界)の可能性について検討を行った。2次元面内問題を対象として、外部領域を非線形要素でモデル化し、その非線形化に伴って伝達境界も時々刻々変化することとした。全時間断面において伝達境界を算定すると計算量が多大となるため、一定時間間隔で伝達境界を算定し、その間はこれを補間することとした。これにより計算時間の効率化が可能となった。 地盤・建物とも大きく非線形化する問題を例題モデルとして検討を行った結果、提案する非線形伝達境界モデルは、既往の粘性境界や、前年度に開発した線形の時間領域伝達境界に比して小さなモデル化領域でも精度が高く、良好な結果となることが確認できた。
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