近年、重要構造物の耐震安全性検討のための入力地震動として上下動が求められるようになっている。しかし、M_J7以上の海溝型地震を含むデータで、日本のスラブ内地震とプレート境界地震を区別した上下動の距離減衰式が作成された例がない。そこで、本研究では、日本のスラブ内地震とプレート境界地震に対する減衰定数5%の加速度応答スペクトル、最大加速度、最大速度の水平動と上下動の距離減衰式を作成した。その結果、同じ条件下では、水平動・上下動とも太平洋プレートの地震の方がフィリピン海プレートの地震より大きいこと、既往の水平動に対する距離減衰式は本研究の太平洋プレートとフィリピン海プレートの地震に対する距離減衰の間にあることがわかった。また、震源深さをDとすると、最大加速度、短周期領域の応答スペクトルは、水平動、上下動ともD^<2/3>にほぼ比例し、同じDではスラブ内地震の方がプレート境界地震より大きい式となった。 また、2009年に発生したスラブ内地震である駿河湾の地震の短周期レベルを推定した。地殻内地震に対する経験式である壇・他(2001)の式から得られる短周期レベルに対する比は、芸予地震と同程度に大きく、西日本のスラブ内地震としては最大級であることがわかった。また、この比は、東日本のスラブ内地震である北海道東方沖地震や釧路沖地震と比べるとやや小さいが、同規模の地震と比較すると東日本の地震を含めても大きい方であった。また、駿河湾の地震の最大加速度は、作成した上記の距離減衰式の平均+標準偏差程度と大きく、短周期レベルが大きいという結果と整合するものであった。
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