昨年度までの研究の中で改良した統計的グリーン関数法による水平動・上下動評価法の妥当性の検証のために、地殻内地震の地震動の距離減衰式の高度化を行った。具体的には、H20年度に作成した地殻内地震に対する応答スペクトルと最大速度の距離減衰式に対する破壊伝播効果と地震波放射特性の補正係数を作成した。これは、特に、震源近傍での予測精度の向上に寄与する。対象は、地殻内地震の横ずれ断層と逆断層の、断層直交方向と平行方向成分に対するモデルである。このモデルには、ラディエーションパターン係数を近似した簡単な三角関数の式が用いられている。また、破壊伝播効果として、Ben-Menahemのユニラテラル破壊する線震源に対するディレクティビティ関数から導出されている、バイラテラル破壊する線震源に対するディレクティビティ関数を基本としながら、震源近傍では、Somerville et al.やAbrahamsonと同様の経験的な考え方を導入している。そして、このモデルをMw6以上の日本の6つの地殻内地震の断層最短距離200km以下の記録に適用し、断層最短距離依存の補正係数を作成するとともに、観測記録との比較から補正係数の妥当性を検証した。また、統計的グリーン関数法で用いる断層パラメータ設定に重要な短周期レベルの地震タイプ(地殻内地震、プレート境界地震、スラブ内地震)、断層タイプ(逆断層、横ずれ)の違いについて整理した。さらに、統計的グリーン関数法で上下動を予測するために重要となる、斜め入射を考慮して地盤の減衰定数を逆解析する方法を仙台の地盤に適用した。
|