本研究は、建築環境の改善における緑化効果について、特に熱・湿気環境を対象として、その物理的現象の機構を解明するとともに緑化効果の定量的な評価を図ることを目的とし、具体的には、次の(4)項目についての研究を行った。(1)緑化植物の蒸散量定量化、(2)植物の蒸散による熱・湿気微気象環境の把握、(3)建築物内の熱環境における屋上・壁面緑化の冷暖房負荷低減効果、(4)緑化面の日射反射による照り返しが室内熱環境に及ぼす影響。 以下に本年度の研究実績を項目ごとに記述する。 (1)緑化植物の蒸散量定量化:植栽の蒸発・蒸散量から植物の蒸散量と土壌の蒸発量を分離し、植物のみの蒸散量を抽出できる実験を行った結果、土の蒸発日変動と植物の蒸散日変動にタイムラグが生じていることがわかった。 (2)植物の蒸散による熱・湿気微気象環境の把握:土場表面から土壌内部への詳細な温度分布を時間ごとに測定し、午前9時頃と午後4時頃に土壌内部の温度がほほ同一温度になる、すなわち、この時間帯では土中への熱移動が見かけ上無視できることがわかった。 (3)建築物内の熱環境における屋上・壁面緑化の冷暖房負荷低減効果:屋上緑化によって、夏期においては小屋裏の温度は低下し、天井の室内側表面温度も低下しているが、室内の窓からの日射熱の侵入の方が室温に及ぼす影響が大きい実測結果が得られた。 (4)緑化面の日射反射による照り返しが室内熱環境に及ぼす影響:芝生、日射反射率の大きい白色、と小さい黒色の試料板、さらに試料板の表面を水で濡らした場合について実験を行った。測定に当たっては、自作のミニSAT計を高さ方向に20cm間隔に10個取り付けて温度分布を測定した。芝生の照り返しの影響は無視できない、また、蒸発冷却によってぬれ面の表面温度は低下し、そのため照り返しによる影響は少ないことを実証した。
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