研究概要 |
学校建築は全国に約44000校あるが,その大部分は断熱や日除けが無いなど環境性能的に非常に脆弱な建築である。それを改善するためには,学校建築が持つべき新たな性能目標値を設定し,また,その目標値を達成するような設計基準・指針(改修も含む)を策定することが必要である。 これを達成するために,今年度は,学校建築に関係する関係法規および補助金に関して,まず,全国アンケートの予備調査として,温暖地の東京都区内および四日市市,寒冷地域の秋田市,などでヒアリング調査を行った。次に,それらの結果を踏まえて,全国47都道府県計282市町村にアンケート調査を行い,96の回答を得た。その解析結果として,設計基準や指針の現状,すなわち,2003年頃から普通教室への冷房設置が増えてきたこと,校舎の断熱は行われるようになってきたが断熱基準を設けている自治体は24%程度であること,IV地域以南で複層ガラスを基準とするところも現れてきたがまだごく少数であることなどを明らかにした。また,オープンプランの持つ環境的な課題は設計基準に反映されてなく,オープンプラン自体が減少傾向にあることも示した。 一方,校舎の温熱環境改善手法として,夏季の暑さ対策について,冷房の入っていない普通教室を対象として,自然通風,特に夜間の通風・換気などの効果について,精算法によるシミュレーションおよび気流解析により検討し,換気・通風時の性状と各手法の効果を明らかにした。また,外断熱,深い庇,クール・ヒートトレンチ(CHT)などの手法を採り入れて設計され,2009年4月に開校した東京都内の小学校について実測を行った。CHT内および教室内温熱環境の測定結果から,CHTの効果を明らかにした。
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