研究概要 |
学校建築は全国に約44000校あるが,その大部分は断熱や日除けが無いなど環境性能的に非常に脆弱な建築である。それを改善するためには,学校建築が持つべき新たな性能目標値を設定し,また,その目標値を達成するような設計基準・指針(改修も含む)を策定することが必要である。 これを達成するために,21昨年度までの調査結果を踏まえ,22年度は,設計基準について検討した。その結果,設計基準は,まず,室内の温熱環境や光環境などの環境およびエネルギー消費量についての「性能基準」を定め,次にその性能基準を満たすことができる建築や設備の「仕様基準」を作成するという2段階で行うのが最善という結論に至った。「性能基準」については,筆者らのものを含めた既往研究から,熱,光,空気などを中心に検討し,一覧表として提案した。また,仕様基準については,各地域の気候特性に合致した典型的な組み合わせ(Typical Solution Sets for School:TSS-S)を順次作成することとした。 一方,校舎の温熱環境改善手法の効果の一つとして,昨年度に引き続き,クール・ヒートピット(CHP)などの手法を採り入れて設計され,2009年4月に開校した東京都内の小学校について実測解析を継続した。その成果として,CHPはこの小学校のように直接教室内に吹き出す方式よりも,空調機に接続して条件に応じて直接吹き出すようにした方が効果的であることや,CHPの長さが50mを超えると効果が小さくなること,などを明らかにした。 震災の影響を受けて研究期間を延長した23年度は,これまでの成果を冊子にまとめるとともに,学会や建築雑誌に発表した。なお,最近建設されたCHTを持つエコスクール,および,上記TSS-Sについて,引き続き検討を行っている。
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