(1) 教材教具、教材備品からの発生化学物質 これまでに明らかになった教材教具、備品の化学物質発生を求めるに相応しい実験手法を用いて、主に教科書に関する測定を行い、これを基に化学物質発生量を求めた。 実験の結果、Soi-oilなどの対策インクを使用しない教科書では、製本後長い時間を経過しても、依然として大きなホルムアルデヒド発生量がある実態が示された。また、使用インクの種類によりVOC発生量に大きな差違が現われる。 (2) 学校環境における化学物質汚染の実態 前項の「教材教具、教材備品(家具等)からの発生化学物質測定」に関わる作業を先行して進めたため、本項は次年度の作業内容とした。 (3) 教室内における化学物質濃度予測 本研究で得られた教材教具、教材備品の化学物質発生量と既往研究による建材の化学物質発生量とを用いて、教室内の化学物質濃度予測計算を行った。 予測の結果、ある予測条件(使用教科書の種類と使用量、使用教室の大きさと建材仕様、換気条件、温度、湿度など)では、対象教室は「学校環境衛生の基準」などの基準値を上回ることが明らかとなった。特に、木質系の教材を使用しない場合、教科による室内濃度の差は現れないことが判明した。 以上の作業により、児童生徒、教職員に対するホルムアルデヒドのみならず、VOC(50物質)の個人暴露量の推定が行え、既往の学校環境に関する室内濃度基準値(学校環境衛生の基準、JEMA安全基準)の妥当性を検証することができるが、次年度は規制対象外の化学物質に関する室内濃度指針値制定の是非も含めたガイドラインの見直しを行う予定である。
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