研究概要 |
昨年度に銀座周辺において取得したデータを用い,フラックスの算定に必要なパラメータである「ゼロ面変位」を推定した。推定は2つの方法(温度分散法,2高度シンチレーション法)でそれぞれ独立に行い,両者の比較を行った。2つの方法により求めたゼロ面変位は誤差の範囲内で一致し,銀座周辺でのゼロ面変位は40~60mであった。独立した2つの手法での推定値で合理的な一致が見られたことから,求めたゼロ面変位の信頼性は高いと考えられる。 ゼロ面変位は,建物群の幾何学的形状から推定されるのが一般的である(形態法)。昨年・今年度に購入した「レーザー計測による都市形状データ」を用いて形態法により銀座周辺でのゼロ面変位を求めたところ,最大でも30mは越えず,平均では5m程度となった。この値は上記の実測値からすると明らかに小さい。その原因を探るため都市形状データを詳細に解析したところ,銀座街区は建物高さのバラツキが非常に大きかった。ヨーロッパでは平均的な建物高さの20%程度のバラツキしかないのに対して,銀座街区では100%を越えていた。形態法は元々均質高さの都市を念頭において開発されたものであるため,銀座のように不均質な街区ではゼロ面変位を正しく推定できなかったものと考えられる。そこで,既存の形態法を改良し,不均質街区でも適用可能な形態法を提案した。この改良形態法を用いれば,シンチロメータによる顕熱フラックス測定に必要な「ゼロ面変位」が正しく算出できる。 一方、モデル計算については、建物単位の熱収支モデルを作成し、この建物単体モデルを複合することで評価街区の熱収支シミュレーションを行う基盤を構築することができた。建物単体モデルは、建物用途や規模に基づき、エネルギー消費機器に伴う排熱、空調システムによる排熱等を詳細に積上げることができる。さらに建物躯体の熱収支計算においては、CFDモデルにより建物周りの風速分布から、熱伝達量を推計するシステムを構築した。
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