本研究では、自然(災害)科学の研究成果として公開が進むハザード情報が、「行政(防災及び計画部局など)やプランナー、地域住民からどのように受け止められ」、「今後の都市計画制度や防災まちづくりに如何に反映されるべきか」について、地震災害を中心に、重層的リスク・コミュニケーションをキー概念に据えて、人口減少期を迎えた我が国の市街化動向を踏まえた検討を行う.具体的には、以下2点の解明を目指す. (1)地域コミュニティにおけるリスク・コミュニケーションと行動変容:リスク対応の個人選択から組織化へ 自治体レベルでの被害想定(リスク情報)の公開自体は進んだものの、少数の試みを除くと、防災まちづくりでの住民利用を十分想定した事例は少ない.そこで申請者らが構築した地域防災力評価web GISを利用し、リスク心理学的知見を踏まえた「リスク理解を、対策の必要性理解から実施へ」と繋げていくことを目ざす. (2)自治体内リスク・コミュニケーションを核とする防災都市計画: New Zealand指針(2004)からの知見 地域防災計画と土地利用計画との制度的連携は乏しく、既存のハザード情報は計画策定上のニーズを反映していない。また従来のハザードマップ研究は発災時の避難など危機対応が主眼にあり、長期的展望から都市計画的な事前対(リスク管理)を積み重ねるという視点は不十分であった。人口減少の下で国土空間の余裕を生かして、災害に強い都市構造や土地利用の誘導に向けた方策の検討が求められるため、申請者が提唱してきた「防災型土地利用計画」の実現化への道を、社会的リスク・コミュニケーションを通じて具体的に模索する。
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