本研究で提起する「領域型ミュージアム」とは、博物館や美術館などの単体施設の枠組みを超えて、広く都市領域をミュージアムととらえる概念である。都市に散在するモノや情報を再結合して、さまざまなコンテンツを生み出すことが可能になる。領域型ミュージアムを成立させる空間・情報系のシステムデザインにおいて、特に、「小型、分散、連携」という特性に着目して研究を行っている。 平成20年度の研究においては、領域型ミュージアムの基本的な条件整理および概念構築を行った。第一に総合システム研究においては、現代社会における「空間と人間」の関係を再検討し、「1:1」や「1:N」という集中型の関係に加えて、「N:N」や「N:1」という分散型の関係が新たに生まれていることを明らかにした。第二に都市領域系研究においては、「N:N」や「N:1」のような「複数の場所」を連携して統合的に活用する可能性に着目し、それを領域型ミュージアムの基本コンセプトとして設定した。第三に建築空間系研究においては、領域型ミュージアムの特性の一つである「小型の展示空間」を可能にする展示キットのシステム・デザインの検討を行った。第四に情報システム系研究においては、複数の場所を連携させるネットワーク型空間システム(HSTP)を検討し、ナビゲーション手法の開発のための基盤技術を検討した。 これら4つの研究分野を総合するものとして、領域型ミュージアムを実現するためのナビゲーション技術の試作開発に着手した。本年度ではその前段として、地図上の位置情報管理を行うための開発調査を実施した。具体的には、Google Mapsの地図サービスAPIを活用し、複数の場所を連携して把握するための基本技術の検討を行った。
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