平成20年度には、研究実施計画にもとづき、研究代表者が上越市高田の雁木通りを対象として第一段階の調査(実測調査)を行った。戦前に建設された町家がもっとも多く現存する東本町通りを対象とした。歴史資料と町内会長への聞き取りにより、伝統的な雁木と町家を含む多く地区として、東本町3丁目、東本町4丁目、東本町5丁日を抽出した。この3地区ではとくに雁木を挟んで向かい合う10軒の範囲を選択し、連続的な配置図と平面図、および通りを挟んだ断面図を作成した。なお実測は、50間に及ぶ1軒の敷地裏まで含めた全体とした。航空写真と歴史資料と各居住者への聞き取りにより、実測住戸の戦前から現在に至る変容過程を把握した。これを連結することにより地区全体の変容過程を把握した。東本町通において、住宅レベルで、15軒め分割住戸(相家)と6軒の合併住戸を確認できた。その変容過程から最小間口2間、奥行き30間という居住の単位を把握することができた。また、明治期からの職業を継続する町家を26軒実測することができた。これにより、職業の時代的変化に対して、茶の間上部の吹き抜けの利用を変えながら、裏庭を含む敷地全体の利用を変えて、対応している住まい方を把握できた。さらに敷地レベルにおいて、地区の変容過程から、高田の町家では、敷地奥行き30間の位置に、裏側で町家を横断する水路が流れていること、そしてこの水路沿いに道が通り、「アカミチ」と呼ばれていることを確認した。東本町通は6カ所で雁行しており、その角地の町家は敷地奥行きが短くなっている。ここでも裏側でアカミチにつながるという敷地利用と間取りが保持されていることも把握した。このアカミチは、敷地裏での近隣の行き来や冬期の除雪作業に使用されると同時に、住宅が表側で雁木通りに面するという構成を支えている。以上の知見は、暮らしの側からみた雁木と町家との対応関係を説明している。
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