□先端的なオフィス事例の分析 日経ニューオフィス賞の応募データから見たオフィスとそのコンセプトとの変遷に関する研究 1980年代後半から、通商産業省(当時)の主導による快適で機能的なオフィスの普及・促進を目的としニューオフィス化運動が始まり、その一貫として1988年より日経ニューオフィス賞が実施された。過去21年間にわたって、当時の社会状況に応じてオフィスづくりに力を注いだ企業を表彰しており、その応募オフィスは日本のオフィスの風潮を表していると考えられる。また、ほぼ同一の書式でまとめられた全2478件にのぼる応募資料はオフィスの変遷をみる上で重要な資料となりうる。そこで本研究では、過去の日経ニューオフィス賞応募資料から各年代のオフィスの特徴を読み取ることで、1980年代後半以降の日本のオフィスとそのコンセプトの変遷を明らかにし、ワークスタイルや「場」の形成に関する基礎的な知見を得ることを目的として分析を行った。 過去21回の日経ニューオフィス賞のうち、第1、6、11、16、21回の5年分の応募オフィス624件から、分析に必要な情報量が不足しているもの、及び、主用途がオフィスでない施設を除いた524件を対象とし、その応募資料をもとに、応募年度・地方・所有形態・業種などオフィスの属性と面積やデスクレイアウト、オフィスコンセプトの関係について分析を行った。 その結果、サービス業の増加、所有形態の地方による変化時期の違いなどが確認できた。レイアウトは依然として対向式の割合が高いが、対向式の詳細な変化をみることで、コミュニケーションの取りやすさだけでなくプライバシーの確保や部署内ヒエラルキーの減少が図られていることが分かった。 また、コンセプトの分析により、20年前は快適性や機能性が重視されていたが、近年は創造性、コミュニケーションなどがオフィスの重要課題としてとらえられていることなどが明らかになった。
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