生活サービスは、今後行財政のスリム化が進み、サービスの質の維持が困難になると考えられる。しかし、教育や医療等すべての住民がサービスを授受できることが望まれる分野は、今後も行政が引き受けなければいけないサービスであり、完全に民間へ手放すことは難しいと考える。一方、生活の質を高めるために提供される交流、講習分野のサービスは、一定の知識や技術があれば供給主体の属性に関わらず提供が可能なものであり、民間への移行が比較的行い易いと思われる。ただし行政は、公的な会場や施設を提供することが求められる。 サービス圏域の再構築では、「サービスを実施する市町村」、「サービスの授受・移動形態」、「サービスの内容」の3要素を同時に考慮する必要がある。サービスの効率化を目的として再構築する場合、広域化するサービス圏域の限度が、旧市町村間の圏域的な結びつきの特徴によって決まってくる。社会的ニーズへの対応を目的として再構築する場合、維持すべき又は新しく補填すべきサービスは狭域圏のサービス圏域を持つ事例が多い。また、サービスの授受・移動形態を変更することで、提供者の移動負担の軽減や、より住民に身近な場所でのサービス授受という効果が望める再構築パターンもある。 生活サービスのモデル化では、S集落を事例として、人づきあいの調査を行い、グラフにより全体構造を表すことで、グラフ理論の一環としてその側面を捉えた。地理的に閉じた一地域における人づきあいは、地理的位置関係を含めた地縁による部分が大きく、集落内でもいくつかの「まとまり」が存在し、その「まとまり」の中につきあいの多い人物の存在が見られた。調査を行なった地域は、昔から居住している人がほとんどで、ネットワークが成熟しきっていたため、抽出できたのは現状のネットワークのみであったことから、ネットワークの成長と変化について、さらに時系列で現象を追う必要がある。
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