平成21年度は、三つの調査の進展をみることができた。 一つ目は、前年度に実施した学童保育関連調査の成果について、さらに追加調査を実施するとともに空間構成と領域形成に着目し、那覇市、浦添市の学童保育の活動空間について、その実態および規模・密度との関係からみた問題点と課題の分析を行った。沖縄県内の学童クラブは、他県と比較して相当に高密度状態のものが多く、動的活動の場と静的活動の場を望ましい形で確保できている事例が少ないが、それらを地域の共有的空間資源として活用する工夫も行われている。そのことから、今後に整備されるべき空間モデルのアウトラインを描くことができた。 二つ目は、前年度に着手した親子や高齢者のサロン的空間について、とくに古民家等の地域の空間的資産を活用した事例を県内で広く求め、その分布と概要を把握した。沖縄県内の古民家等は研修や宿泊、観光、飲食店などに使われる一方で、民家特有の可変性があり開放的で、各種活動の領域間の接点が多様である特性を生かした高齢者や親子の居場所として活用される事例が徐々に増えつつある。 三つ目は、高齢者と子どもが地域の文化的資産に関わる活動を通して、接点を多様化する試みの検証である。その際、沖縄特有の状況として、沖縄戦の戦争遺跡の存在を含めた地域の史跡の総体を住民が知る試みが重要である。そのため、戦争遺跡についての理論的整理を行うとともに、南風原町等で地域住民が取り組む学習活動の過程とその意義を検討した。
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