平成22年度は、二つの調査の進展をみることができた。 一つ目は、前年度に実施した学童保育関連調査の成果について、追加調査を伴いつつ空間構成の分析を深め、静的行為と動的行為の関係を軸としつつも、すきま空間や施設外への空間利用の拡大についての整理を行うことができた。これによって様々な地域の空間的資源の活用にあたり、所与の空間の利点と問題点、付加され工夫されるべき空間の室と使い方の方向性についての見取り図を得ることができた。この知見をもととして、小学校内の新たな施設空間の利用の実例に関与し、整備に参画しながら利用実態を調べる調査に着手することができた。 二つ目は、高齢者と子どもが地域の文化的資産に関わる活動を通して、接点を多様化する試みの検証である。その際、沖縄特有の状況として、沖縄戦の戦争遺跡の存在を含めた地域の史跡の総体を住民が知る試みが重要である。そのため、前年度の成果に加えて沖縄県内全域での地域の文化的資産の活用状況に関わる調査を進め、大多数の市町村の聞き取り調査を行った。それによって市町村ごとの体験プログラムの方法や理念の特徴、戦時の状況の差異との関係、戦後の軍事基地建設との関係の整理などを行った。これをもとに、戦争遺跡を含めた文化的資産の総合的活用の実態と課題についての整理を行うことができた。とりわけ南風原町では、町民による文化的資産や土地の記憶への認識共有の過程に特徴があり、実践の方法論としての重要性が理解された。
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