近年は各地で「住民参加型のまちづくり」としてワークショップ等が盛んに開かれている。しかしその成果を実際のまちづくり計画に落とし込んで行くための方法については明確になっていない。特にそれが子どもの場合には、計画を作っただけで終わってしまう場合が少なくない。本研究では、計画策定に子どもの参画を進めるための具体的手法、そしてそれを行政の計画へ結びつける方法について、日本の社会システムに合ったものを開発することを目指している。 まず、海外の先行事例として、ドイツ・ミュンヘンで25年前から行われている「ミニ・ミュンヘン」を調査した。これは子どもたち自身が子どもだけで疑似的な「まち」をつくって運営するという取り組みである。「まち」には様々な商店やサービスがあり、子どもたちはそこで働いてその中だけで流通可能な賃金を得、商品やサービスを購入し、選挙によって選ばれた子ども市長や議会のメンバーを中心にまちを運営することで、都市の様々なしくみを体験できるというもので、世界で最も早くから始められている、最も大規模な取り組みとして知られている。様々な体験をすることで、教育、自治、経済、労働など多様な効果が期待され、ドイツを中心にヨーロッパで広がっている。この影響を受け、日本では7年前から同様の取り組みとして「ミニさくら(千葉県佐倉市)」が開始され、近年では20数か所で様々な規模の「こどものまち」が実施されるようになってきている。そこで代表的な国内の事例についてもヒアリング調査を行った。 その結果、子どもの参画を促進するためには、それを支える地域の大人や行政との連携などの要因があることが明らかになってきた。ユニセフでも「こどもにやさしいまちづくり」として子どもの参画を推進しようとしており、今回の調査研究は、日本国内の仕組みづくりのほか、今後は環アジア太平洋地域でのネットワークづくりにも発展できそうである。
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