研究概要 |
1.研究概要:1)精神疾患患者の退院促進に積極的に取り組んでいる2つの病院の患者記録データを基に,入院患者の患者動態について,入院前後の環境移行を含めて分析し,精神医療施設の病棟構成とこれからの回復支援環境について考察を行った.2)2007年~2009年にかけて実施したK病院での入院患者記録調査と病棟内行動観察調査の結果を基に新たな分析を行った.これらの分析を通して,近年の精神医療施設の患者動態と急性期病棟における患者の行動特性を基に療養環境整備に関する考察を行った. 2.結果概要:1)2病院計11病棟の入院前・退院後の生活場所,病棟別平均入院期間をもとにそれぞれの病棟を退院した患者の特徴を整理した.退院患者の入院回数,入院期間,入院前後の生活場所をもとに類型化を行い,それぞれ7つの類型に分類しその特徴を整理した.両病院に共通する4つの類型を析出した.自宅から入院して自宅に退院する急性期の受療行動のみならず,長期入院後に自宅以外の場所へ生活の場所を移す患者や,自宅以外場所からの入退院を繰り返す患者を含めた包括的な生活環境として,精神疾患患者の回復支援環境を考えていく必要性を示した.2)K病院における3年間の入退院記録から,近年の精神医療施設の患者動態の傾向を示した.5つの病棟における共用空間の利用特性を明らかにした.また,急性期病棟の共用空間における長期間の観察調査結果を基に,滞在場所,行為内容,対人姿勢に関する分析を行った.その結果,患者は,共用空間内の複数の選択肢の中から,行為内容や対人的な関係に適した滞在場所を選び,また,対人的な関係を調整しながら,自らの回復段階に応じて,対人的な関係を再構築している状況を示した.
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