本研究は現在もなお地域の住宅生産における中心的な存在である大工・工務店等小規模生産システムの現状のサステナビリティの確認とその向上のための方策を検討するものである。具体的には、小規模生産の実態を文献、統計等からマクロに検討すると共に、都市、地方の地域を対象として、新築住宅および、大工・工務店の実態調査を実施する。それらの検討から、小規模生産の市場および利益構造を解明し、市場環境の変化を踏まえた新たな方策について検討、提案する。平成20年度の具体的な成果は以下の通り。 1.公的データを用いた大工・工務店による小規模生産の実態把握 大工・工務店による小規模生産の実態を着工統計、事業所統計、職業別電話帳等から明らかにした。 2.大工工務店に対する行政の施策、業界団体によって実施された各種事業の把握 1980年代以降、行政セクターによって実施されたこの問題領域に近い施策である、HOPE計画、木造住宅振興モデル事業、木造公営住宅建設、在来工法住宅部材流通消費改善事業、木質住宅部材加工流通高度化事業等、活路開拓事業等についてレビューした。 3.調査対象地域を限定したアンケートによる大工・工務店の実態調査 群馬県みなかみ町を対象として予定し、大工・工務店の悉皆調査を実施した。平成5年に研究代表者が中心となって、新治村(町村合併により現みなかみ町)において、大工・工務店の悉皆調査を実施しており、今回はその後の追跡調査を実施した。事業を継続しているものについては、業務の内容、営業エリア、生産の体制、実際に施工された住宅等について、平成5年当時からの変化を把握した。
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