2008年は、日本で最初のシニアタウンとして福岡県に開発されたMタウンを対象に、移住した高齢者の居住スタイルや居住ネットワークを分析し、居住システムを検証することにより、高齢者の居住継続を保障し、自立生活を可能にする居住環境に再編するための条件を究明することが目的である。Mタウンは、総面積126万m^2の広大な丘陵地に戸建住宅地として830区画が造成され、調査時点で372区画が販売済み、定住は203戸である。60歳以上の定住者を対象に、97戸のアンケート調査を行い、その中の53戸を訪問調査した。調査時期は2008年8月である。居住スタイルは、夫婦を中心とした高齢者独自の住まい方と夫婦関係をみる。移住後の夫婦の住まい方を概観すると、「趣味」や「くつろぎ」で個の自立を果たし、「食事」や「家事」で夫婦共存を確認し、さらに「接客」で外とつながる。夫婦関係をみると、協力自立が最も多く、お互いの立場を尊重し、夫もわずかだが家事に協力し、お互いの趣味活動に理解を示している。居住ネットワークを親子関係と地域関係からみる。親子関係も協力自立が最も多く、子どもに依存せず自立しながらも深い交流をしている夫婦が目立つ。地域交流をみると、近隣よりもタウン内での交流が高く、地元との交流は少ない。タウン内交流のきっかけは「趣味活動」である。Mタウンには温泉があり、これを有効活用して居住者が地元とのつながりを持てば、シニアタウンは孤立せず、活性化を図れるだろう。居住システムをみると、立地環境として自然には恵まれているが、交通機関と生活施設は不備である。管理環境として、管理会社がハード面のサポート、居住者がソフト面のサポートと役割を分担する。コミュニティセンターを中心とした活発なサークル活動が居住者と管理会社を繋ぐ。両者は共に協力しあい、地元自治体と連携して、交通機関の整備や移動店舗の導入など、シニアタウンの発展・継続に向けて取り組むべき課題がある。
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