2010年は、日本有数の別荘地のひとつである栃木県那須町のM別荘地を対象に、定住した高齢者の居住スタイルや居住ネットワークを分析し、居住システムを検証することにより、高齢者の居住継続を保障し、自立生活を可能にする居住環境に再編するための条件を究明することを研究目的とする。M別荘地は、総区画数は890区画で、現在約500戸が建設され、うち定住世帯は約120戸である。60歳以上の定住者を対象に32戸の訪問調査を実施した。調査時期は2010年8月末から9月初めである。居住スタイルは、夫婦を中心とした高齢者独自の住まい方と夫婦関係をみる。住まい方をみると、接客を含めた多くの生活行為がLDKに集中しており、夫婦ともLDKで過ごす時間が長い。夫婦関係をみると、「付かず離れず」の協力自立が目立ち、食事や団らんは一緒、家事も協力するが、趣味活動には個別で参加する。居住ネットワークは、親子関係と地域関係からみる。親子関係も協力自立が最も多く、子どもに依存せず自立しながら、連絡頻度は密で深い交流を図っている。地域交流をみると、別荘地外の公民館で趣味活動を展開し、別荘地内に居住者専用の温泉があり、毎日定刻の利用者達で、「温泉縁」を築いている。別荘地内に集会所がなく、自治会も十分機能していないため、地域での交流が盛んなタイプとそうでないタイプに二分され、地域コミュニティが構築されにくい。居住システムをみると、立地環境として自然には恵まれているが、日常生活施設は半径5km圏内にあり、車による利用である。管理環境としては、管理会社は建物管理が主で、生活や交流のサポートはしていない。高齢者の居住継続を保障するには、確固としたメンバーを伴って組織化された「自治会」と、自治会をはじめ趣味の活動が継続的に可能な居住者専用の「集会所」が不可欠である。
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