本研究の目的は、都市における低層高密度住居群の空間システムを数理的に解析し、多数の事例を横断的、体系的に把握することによって、建築・都市空間の高密度化の計画手法として有効な空間システムを客観的に提示することであり、次の3点となる。 1)国の内外を問わず、都市における低層高密度住居群の事例を網羅的に多数取り上げ、各事例において、住居単体とその集合体の空間構成を捉え、空間システムの特性を概観し、事例の類型化を行う。 2)低層高密度住居群の代表的な事例をとりあげて詳細な調査を行い、それぞれの空間システムを数理的に解析する。解析手法については、既存の密度指標やスケールとの関係を厳密に捉えながら、横断的、体系的に空間システムの有効性を評価できる数理的手法を開発する。 3)上記の成果を統合的に提示するために、低層高密度住居群の空間データベースを構築する。低層高密度化において有効な空間システムを客観的に提示することにより、都市の高密度住居に対する新たな計画手法を導出する。 平成21年度は、これらの目的のうち主に2)について重点的に取り組み、以下の3点を実施した。 1.現地実測調査の補足:既に現地実測調査の対象地として中国・北京の四合院住居群を取り上げ、地域として中国・北京の歴史文化保護区に該当する4地域を選定した。この補足的な調査をするとともに、低層高密度住居群の比較対象として、高層高密度住居の調査も実施した。 2.調査対象地に関する詳細な分析:北京には伝統的な住居が多数存在していたが、近年の大規模開発とともに急速に消失している。ここで取り上げた歴史文化保護区では、伝統的な建築が比較的多く残存している。この地域において、空間形状データベースを作成し、広域的に空間形態の特徴を捉えることのできる解析手法を適用した。結果として、その空間的特徴を定量的に示すことができた。 3.他事例との比較分析:同様の分析手法を他事例(東京の密集住宅地など)に適用し、比較分析が行えることを確認した。結果として、それらの空間的特徴を定量的に示すことができた。
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