本研究の目的は、これまで建築やインテリアの設計計画の分野において、多くの研究者や設計者からその必要性を指摘されながら、ほとんど計測されてこなかった目的行為を完遂するために身体周囲に必要な非接触の空間的領域である「アキ寸法」に着目して、多様な身体動作の場面を対象にして人間工学的に実験的に計測を試行して、当該計測値を日常生活場面に対応させて体系化を図ることである。 平成21年度は、前年度に購入した3次元ビデオ動作解析システム(DHK社製Frame-DIASIV)を活用して、日常生活行為を想定した身体動作寸法の計測を試みた成果を踏まえて、多様な日常生活場面を対象にして身体周囲に必要なアキ寸法の計測値を体系的にまとめることを試行した。特に、体格の大小による身体的差異とともに、男女の違いによる差異、年齢による差異、運動能力による差異などを加味して実験的に検討した。さらに、行為者が目的動作を完遂するために身体周囲に必要な「アキ寸法」は、空間的な把握が必要なことから、計測された2次元の寸法を3次元の空間に置換するとともに、それらの計測値のデジタルデータ化を試みた。 最終年度は、前年度までに収録された身体周囲に必要な「アキ寸法」の計測値を総合的にデジタルデータ化して、建築、室内、設備などの設計に有用な計測資料としてまとめる。さらに、本研究から得られる成果は、ITを活用した当該分野の実務設計の現場に広く提供するために、汎用性の高い3次元CAD等との適合性などを検討して、実践的な展開を目指す。
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