本年度は科学研究費助成の最終年の3年目で、おもな活動は以下の3つであった。 (1) 岩山信子家の増築部の撤去作業: 岩山信子家住宅は、江戸末期から明治初期に遡る集落内でも古い古民家である。実測調査は昨年度実施したが、背後に取り付くブツマとザシキは後世の増築部で、痛みが激しく、雨漏りの危険もあることからこの部分を撤去し、創建当初の状態に留めることにした。 (2) 道場誓家住宅の実測調査: 道場家は平成23年度修復を予定している民家で、改修に備えて詳細な実測調査を行った。この成果は平成23年度日本建築学会全国大会にて発表する予定である(投稿済み)。 (3) 休憩所の建設: 一昨年、我々の活動に賛同した材木屋から不要材を譲り受けていたが、ECOの観点からこの材を活用して休憩所の建設を行った。梁間1間、桁行3間、平屋建ての小規模な建築である。集落のほぼ中央に位置し、畑作業に通ってくる村人の休憩場所としてあるいはイベントにおけるバーベキューなどの施設としても活用できる。 *平成18年に始まったこの活動も5年を経過し、これまでに5棟の民家を修復、このうち3棟はすでにECOプロジェクトの各種イベントにおいて、宿泊や休憩所として活用されている。また、この活動を通して小原集落の存在をより広く知らしめることもできた。 *限界集落の再生とは、住民を呼び戻し、往時の村落共同体組織を取り戻すのが本来の姿であろうが、小原集落のように住民も数人だけで、廃村の危機が迫っている場合には、集落機能の再生は無理であり、我々の活動のように、集落の施設や景観を活かし、イベントなどを行いながら人を呼び込むなどの方策を考えていかねばならない。我々の活動はこうした「限界集落」の再生、活性化の一方策を提示した点で評価できるであろう。
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