研究概要 |
我々はZn-Mg-(Y, RE)置換系の研究として、Zn-Mg-(Y, Ho), Zn-Mg-(Y, Dy), Zn-Mg-(Y, Gd)系等の試料作成を行った。これらの系は多結晶試料の合成から始め、徐々に単結晶育成に必要な種々の情報(液相組成、成長温度、炉条件等)の取得を行った。また、近年発見されたAg-In-RE系近似結晶に対して、ほぼすべてのREに対して多結晶試料の合成を行った。物性測定としてはZn-Mg-(Y, RE)系、およびAg-In-RE系の両方に対して、マクロ物性および中性子散乱の両面からその物性研究を開始した。Ag-In-RE系に関しては、ほとんどすべてのREに対する帯磁率測定を行い、この系の多くが低温(T<5K)でスピングラス的な転移を示す事、しかし、軽希土類(Ce, Sm等)系は本質的に異なる磁性を示す事を見いだした。さらに、RE=Tbを選択し、中性子散乱を用いて磁気散乱を詳細に調べた。その結果、この系でも低温で(準結晶系と同様の)強い短距離相関が成長する事がわかった。この結果は、準結晶の長距離秩序阻害要因が準周期構造でなく、その局所的なクラスター構造にある事を示唆するものであり、大変重要な結果と言える。一方、Zn-Mg-(Y, RE)置換系に関しても数々の中性子散乱実験を行った。Zn-Mg-RE系では非常に奇妙な非弾性散乱スペクトルを示す。しかし、このスペクトルが結晶場に起因するという主張もある。そこで、我々は結晶場励起を持たないRE=Gdの中性子実験を行い、Zn-Mg-(Y, Gd)においても他のREと同様な非弾性散乱スペクトルが観測した。この結果はこれらの非弾性シグナルが結晶場に起因するものではない事を如実に示すものである。これらの発見の為研究計画が初期の予定から多少ずれたが、繰り越しを行う事により交流帯磁率測定用プローブを完成する事が出来た。
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