研究概要 |
H.22年度は最終年度という事もあり、これまでに測定したデータの解析を精力的に進めた。昨年度中に既におおよその理解が進みはじめていたAg-In-RE(RE:希土類元素)近似結晶系に関しては、バルク物性をほぼすべてのRE元素(RE=Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm and Yb)に対して測定し、測定が行われた殆どすべてのRE系で典型的なスピングラス的凍結現象が見られる事を示した。さらに、RE=Tb系に関してはこれまでの中性子非弾性散乱測定に加えて低エネルギー部分を冷中性子分光器で測定し、我々のこれまでの予想(Ag-In-RE近似結晶系のスピン凍結が準結晶に於けるそれと本質的に同じ)に確信を持った。そこで、これらの結果を詳細な解析とあわせてJ.Phys.:Condens.Matterに投稿し、掲載された。さらに、この論文は10Pセレクションに選ばれ、LabTalkとして研究室の研究内容が紹介される等の栄誉に預かった。 さらに、H22年度は関連物質の研究も精力的に進めた。中でも、RE元素が高い対称性を持つFriauf多面体の中心に配置されているPrTi2A120の結晶場分裂に関して、中性子非弾性散乱を用いた研究を行った。その結果、この物質のPr3+イオンの結晶場基底状態は非磁性2重項であり四極子自由度を持つ事、低温でこの四極子自由度が強的に秩序化する事等を確認した。この結果は例えばCd-Yb近似結晶に於いてクラスター中心の4面体が低温で秩序化する事と対応されると考えられる為大変興味深いと考えており、現在論文を準備している。
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