研究概要 |
本研究課題の遂行にあたり、2年目にあたる今年度の主たる目的は、次の2点である: 1.広い組成域にわたる試料を作製し、その試料を構成している各元素、とりわけ、NiとCeの電子状態の変化を、巨視的な磁化測定から探ること、 2.1.で得られた知見を、放射光を用いた微視的な手法から検討・検証すること。 これに対して、本年実施したことは、次の通りである: 1-1.試料作製は、(1)X=0.05(チョクラルスキー法)、(2)X=0.10,0.15,0.20(ブリッジマン法)については、単結晶試料を作製できた。(3)X=0.50,0.80については、アーク溶解のみの多結晶試料を作製した。単結晶試料については、ラウエ写真による方位出しも行った。 1-2.1-1.で作製した試料について、それらの磁化測定と、分子場近似解析を行った。 2-1.放射光による電子状態の直接的な観測は、本研究の肝に相当する。但しこの実験は、現在、日本国内では、SPring-8での実験のみ可能で、実験するためには、課題申請の上、採択されることが必須条件となる。軟X線MCDのラインに一度、課題申請を行ったが、採択まで一息のところで不採択となった。ところが、原研(日本原子力研究機構)の岡根先生が本研究に強い関心を示され、その結果、原研が所有しているSPring-8の専用ラインでの放射光の実験への道が、2010年度に大きく拓かれることになった。これは、本研究にとって、極めて大きな成果である。 3.2009年度に得られた成果とその意義: ・X=0.15-0.20の磁化の温度依存性の解析から、Ni(and/or Ce)が、この組成で磁気モーメントを発現していることが明確になった。更に、極めて特徴的な磁化の温度依存性の解析から、RKKY相互作用が激減していることが判明した→所謂、近藤状態とRKKY相互作用の競合が、直接、初めて、観測されていることが示唆される。 ・X=0.80の磁化の温度依存性の分子場近似解析から、Niに加えCeも磁気モーメントを有していることが示唆される。 ・放射光により、直接的に電子状態を観測できる可能性が、極めて大きくなった。
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