研究概要 |
平成22年度の成果は以下の通りである (1)Al-Cu-TM-Si(TM=Fe,Ru)1/1-1/1/1/1/1近似結晶と種々のB2化合物についてFLAPW-Fourier法を活用してフェルミ直径の2乗値を計算し,Hume-Rothery matching則が満たされていることを示した. (2)有限な固溶範囲を持つCu-Zn,Cu-Al,Ni-Zn,Cu-Ga,Co-Znガンマ相合金を作成し,その密度と格子定数の精密測定から単位胞内の原子数の組成依存性を明らかにした.そして安定化範囲が有限になる機構を考察した,組成に応じてフェルミ準位は移動するが,ガンマ相合金が存在する全固溶範囲にわたってフェルミ準位は擬ギャップ内に収まることで安定化範囲が決まっていることを指摘した. (3)Mg17Al12化合物は単位胞に58個の原子を含む複雑系である.この系についてFLAPW-Fourier解析を実施し,この系では|G|^2=24と26が関与するFsBz相互作用によりFermi準位に擬ギャップを作り安定化していることを示した (4)3年間の成果をCRC Press, Taylor & Francis社から単行本として出版した.複雑構造でFermi準位に擬ギャップを形成して安定化している一連のガンマ相合金及びいくつかのMI及びRT型1/1-1/1-1/1近似結晶を中心に擬ギャップの成因機構を詳細に説明した.要点は我々が開発したFLAPW-Fourier法を使うことで,軌道混成効果の強弱に関係なく,FsBz相互作用を抽出することが可能となり,100年近く未解決のままで残っていたHume-Rothery電子濃度則の本質に迫る成果を得たことである.
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