研究概要 |
平成20年度に設計し直した試料精製用の蒸留装置を用い、試料調製をしつつ、同様に設計したX線回折(XRD)用モノクロメーターや高温用ラマン実験炉を作成し作動試験の後、本実験(XRDおよびラマン分光)を開始した。B_2O_3-Tl_2O系やB_2O_3-CaOガラスに対しX線回折実験を行い、相関関数G(r)を求めたところ、いくつかのピークが観測された。例えばB_2O_3-Tl_2O系に対しては、それぞれのイオン半径(B^<3+>=0.01nm,O^<2->=0.135nm(III)および0.140nm(IV),T1^+=0.150nm(VI))から考えるとr=0.14nm付近の第一ピークはB-O相関、r=0.24nm付近のピークはO-O相関およびB-B相関、r=0.34nm付近のピークはTl-O相関およびTl-Tl相関で構成されていると考えられる。次に動径分布関数D(r)を距離rで割った関数D(r)/rのピーク分離を行ったところ、r=0.14nm付近におけるピークを三配位型と四配位型の2種類のB-O相関にピーク分離することができた。Tl_2Oの含有量が増えるにつれ、r=0.147nmの四配位型B-O相関が次第に大きくなり、ピークがブロードになっていることが確認できる。これは、Tl_2Oの添加によりBO_3三角形構造の一部が四配位型のBO_4四面体構造に変化したためと考えられる。従って、ボロキソル環のネットワーク構造に歪みが生じたとも考えられる。同じ試料に対しラマン分光実験を実施したところ、XRD実験とほぼ同様の結論を導きうることが予想された。もう一つの非晶質体の代表である高温液体としては、YCl_3やLaCl_3と各種アルカリ塩化物との混合融体を試料としてラマン分光実験を予備的に実施したところ、6配位型の錯イオン形成と認められるスペクトルが得られた。
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