本研究の目的は、非晶質系物質の高度集積化構造制御のための包括的解析法の確立にある。従来行なわれている物質の構造解析の現状は、個別的・分散型の測定方法を独立に適用して個々の結果を得ているにすぎない。従って、測定結果だけでなくその解釈において、大きな差異が生じている。これまでばらばらに適用されてきた手法を規格化し、個々の測定法の特徴を活かした解析を行い、非晶質系物質の高度集積化構造制御のためにそれらの結果を相互にフィードバックしあうだけでなく統一的統合的に解析するソフト開発を本研究で目指す。 非晶質物質の代表としてガラスと高温液体に対して回折実験・ラマン分光実験・計算機実験を行った。ガラスとしては二酸化タリウムを添加したホウ酸塩だけでなくテルル酸塩も対象とし、高温液体としては希土類塩化物とアルカリ塩化物の混合融体を選定した。一連の実験から、それらの非晶質系物質の最適化構造を求めた。ガラス類は溶融・急冷法により調製し、さらに成形・研磨・微粒子化を行う。希土類塩化物は、希土類酸化物と塩化アンモニウムとの反応により合成し、これを昇華精製して使用した。回折実験からは配位数や原子間距離を求め、ラマン分光によりガラスや高温液体内に存在するイオン種等の構造を調べ、構造解析の精密化を図った。それに基づきさらに解析プロセスの高度化を図った。ホウ酸塩系ガラスでは3配位あるいは4配位型B-Oユニットが、テルル酸塩系ガラスでは三方両錐体型や三方錐体型Te-Oユニットが相互に連結して網目構造を形成していることがわかった。希土類混合融体中ではLaやYが6配位型の錯イオン(LnCl_6^<3->)を形成し、希土類の濃度に応じてそれらがさらに頂点や稜を共有してクラスタを形成することもわかった。本研究によりほぼ当初の目的が達成された。
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