本研究では、申請者の研究グループが独自に考案する難溶解性原料を出発材とする作製プロセスによって、究極のガス分離材としての応用に加え、量子閉じ込め効果を利用した新規配列ナノクラスターデバイスへの展開が期待できる高密度高配向ナノ構造ゼオライト超薄膜の創製を目的として、種々の検討を行っている。以下に、初年度に行った検討から得た知見の概要を記す。 ・出発原料として固体状ケイ酸ガラスを用い、アルカリ性熱水中でそのような出発材を徐々に溶解させる手法によって、b軸に配向したMFI型ゼオライト膜がジルコニア基板上に形成可能であることがわかった。微構造観察の結果、得られた膜は数百nm程度と薄く、得られた膜も比較的緻密性が高いことがわかった。膜の組成を分析した結果、膜は主にSiと酸素から構成されていることが観測された。・同プロセスの下、金属基板上への製膜を検討したところ、ジルコニア基板と同様に、b軸に配向し且つ比較的緻密なMFI型ゼオライトの薄膜が作製できることが明らかになった。 以上簡単に得られた知見の概要を記したように、本年度の結果に基づくと、申請者の研究グループが提案する膜作製プロセスの有用性が示唆されているものの、その有用性をより明確にするとともにプロセスの汎用性を高めることを踏まえると、次年度に向け次のような点が検討課題である。 ・それらの製膜には反応時間として9日間程度を要し、より短時間下で製膜可能なプロセス条件を見出す必要がある。 ・膜形成機構を理解する上では、反応時間による膜構造の変化を評価しながらより詳細な検討を行う必要がある。
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