本研究では、究極のガス分離材としての応用に加え、量子閉じ込め効果を利用した新規配列ナノクラスターデバイスへの展開が期待できる高密度高配向ナノ構造ゼオライト超薄膜を、申請者の研究グループが独自に考案する難溶解性原料を出発材とする作製プロセスによって創製し、得られた知見を基に、ゼオライト膜の高度利用と多面的応用に資する高密度高配向ナノ構造ゼオライト超薄膜作製基盤技術の構築を図ることを目的とし、検討を進めている。中でも平成21年度は、分離膜への展開を図ることを視野に入れ、支持体基板となる多孔質基板の作製を行い、得られた多孔質基板を用いて膜作製を行った。以下に、平成21年度に行った検討から得た知見の概要を記す。なお、多孔質基板はY_2O_3-stabilized ZrO_2(YSZ)粉末をSlip-castingすることによって作製され、その多孔性は焼成条件によって制御された。 ・ 初年度に行った緻密基板上でのゼオライト膜作製の検討結果に基づき、多孔質基板を用いて同様の検討を行ったところ、膜形成さらにはゼオライトの生成にも至らず、基板の多孔性が膜形成に大きな影響を及ぶすことがわかった。 ・ 原料であるガラスの仕込み量と、構造指向材として投入する水酸化テトラプロピルアンモニウム溶液(TPAOH)量を変化させながら、膜作製を検討した結果、ガラス仕込み量には最適値がある一方、TPAOH量は多いほどゼオライトの生成が促進される傾向にあることがわかった。しかし、連続性に富む膜形成には至らず、作製条件の更なる検討が必要とされた。
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