ポリメチルシルセスキオキサン溶融紡糸過程に関して、150℃が最適温度であること、一方該当温度での長時間の保持は、融液の硬化を引き起こすため、熱硬化性に鑑みた紡糸条件の選択が細径繊維を得るためには必須であることを明らかにした。現在、紡糸直後において11-12μ、焼成後には10μを割る条件を設定することが可能となっている。不融化に関しては、シラノール基と気相におけるルイス酸との反応が架橋機構として有力であり、架橋剤としてはSiCl_4、条件としてはSiCl_4ゾーンと繊維ゾーンに温度差をつける2ゾーン不融化が、繊維の可撓性を増す方法として有力であることが分かった。耐熱性としては、酸化雰囲気、数分程度の短時間であるなら、1300-1400℃においても繊維形状を保つことが確認されている。しかし該当温度において数時間単位での長期間、熱処理、保持を行うと、繊維表面被膜の肥厚化がもたらされ、皮膜内にクラックが発生する。またカーボンブラックが共存した炭素活量の高い還元雰囲気では、耐熱性は概ね1200℃付近が上限と考えられ、1300℃を超えると、繊維表面における炭化物(アルゴン雰囲気)や窒化物(窒素雰囲気)の析出が見られ、繊維の細りも観測される。本繊維が実用に適する環境としては、多少、酸素活量の高い雰囲気が必要とされるものと推察される。引張り強度においては、市販のSi-C-0繊維には現在のところ及ぼないものの、コスト、紡糸、不融化工程におけるハンドリングの容易さから見て将来の断熱材、フィルター材料として充分なポテンシャルを秘めているものと思われる。さらに炭素含有量の低減により、皮膜の肥厚化の防止、強度の向上を計画している。
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