| 研究概要 |
第1に,高容量化が期待されるLiイオン正極活物質として層状構造を持つLi-Mn-Ni-Co系酸化物が注目されている.本研究では,Li(Mn, Ni, Co, Al)O_2, zLi_2MnO_3・(l-z)Li(Mh, Ni, Co)O_2を合成し電池特性を評価した.また,粉末中性子・X線回折測定により結晶構造解析を,MEMを用いて原子核,電子密度分布を求めた.また,X線吸収分光法(XAFS)を用いて局所・電子構造について検討した.さらに,中性子全散乱測定を行い局所構造について検討した.その結果,Li(Mn, Ni, Co, Al)O_2ではAl置換による原子核密度分布に変化が見られ,局所構造解析からAl置換が遷移金属層内のオーダリングに影響を及ぼすことが明らかになった.zLi_2MnO_3・(l-z)Li(Mn, Ni, Co)O_2では固溶による電子密度分布の変化が見られ,局所構造解析から遷移金属層及びLi層と酸素層との層間距離が変化することを見出した.これらより,様々な解析法を組み合わせて材料を詳細に評価し,局所構造と電池特性に相関関係があるという新しい知見を得た.第2に,FeRAM用強誘電体材料としてBi層状ペロブスカイト強誘電体の一つである(Bi, RE)_4Ti_3O_<12>系強誘電体は,高疲労耐性,比較的大きな残留分極という特徴を有し,非鉛系圧電セラミックス材料として期待されている.本研究では(Bi, RE)_4Ti_3O_<12>のTiにMoを置換した試料及びBi_4Si_3O_<12>(BSO)を添加した試料,さらにOにFを置換した試料に新たに着目し,希土類,Mo, F置換,BSO添加が強誘電特性に与える影響を中性子及び放射光X線を用いた結晶・電子構造解析,XAFSによる電子構造解析により検討した.この結果,Mo置換・BSO添加により,マクロな観点では粒成長と緻密化が起きること,ミクロな観点では特定の酸素サイトが欠損し易いこと,そのサイトは強誘電特性を大きく左右すると考えられるTiO_6八面体に含まれていることから,酸素欠損量が強誘電特性に大きな影響を及ぼしていることを明らかにした.これらの検討からMo, F置換・BSO添加による粒子形態の変化と試料の緻密化,結晶構造の変化による共有結合性の増加とそれに伴う酸素欠損の減少が強誘電特性向上の要因であることを明らかにした.
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