本研究では、MPB (Morphotoropic Phase boundary)近傍でのリラクサー型強誘電体固溶体単結晶のドメイン構造が、その材料の圧電特性にどのような関連があるかを詳細に調べることを目的としている。ドメイン構造の観察には、良質のITO透明電極を結晶表面に作製する技術が必要であり、そのために設計試作して購入した簡易型のスパッタ装置を用いてITO透明電極をスパッタにより作製する技術を開発した。ITO透明電極のスパッタリング技術の改良を続けて、ある程度良質なITO薄膜を試料上に作製することができるようになった。この技術を用いて透明電極を作製し、強誘電ドメイン構造の観察を偏光顕微鏡及び原子間力顕微鏡の圧電モード(PFM)を用いて行った。実験は、MPB近傍でのリラクサー型強誘電体固溶体単結晶0.91PZN-0.09PT試料用いて、測定試料(001)板及び(111)板を作製して、圧電特性を、強誘電・強弾性ドメイン構造との関連を偏光顕微鏡及び原子間力顕微鏡の圧電モード(PFM)により詳しく調べた。原子間力顕微鏡によりR相での(001)板と(111)板でのドメイン構造を詳しく調べたところ、(001)板では、マイクロメートルサイズの強誘電ドメインの中に、数十ナノメートルオーダーのスポット型のインクルージョンが観察され、透明電極を通してドメイン全体に電界を印加してもマルチドメインのまま変化しなかった。一方(111)板では、電界を印加する前にはストライプ状のドメイン構造が多数見られ、これに電界を印加すると電界増加に伴なってストライプ部分が横方向に広がって大きなドメインに成長していく様相が一部であるが、観測することができた。 当該年度は、ドメイン構造の観察及び電界印加を可能とするためのITO透明電極のスパッタリングによる作成法の開発などを行うことができた。
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