研究概要 |
一次元イオン導電体として知られるホーランダイト型化合物K_x(Mg,Ti)_8O_<16>の単結晶X線回折測定を250Kおよび150Kの温度において行った。その測定データを解析することにより、伝導路内のKイオンの確率密度分布の温度依存性を求め、さらにその移動過程におけるエネルギー障壁を評価した。その際、できるだけ正確なポテンシャル曲線を得るため、原子変位パラメータに3次以上の高次項を導入して解析を行った。また、Kイオンは結晶内の空孔を介して移動するため、構造中の空孔の数とイオン伝導に寄与しうるイオンの数は一定の関係式により結びつけられる。これを解析過程の制約条件に取り込むことにより構造パラメータの精度を高めるとともに、上記の局所構造モデルとも矛盾しない合理的な解析結果を導出した。K_x(Mg,Ti)_8O_<16>のマイクロ波領域における電導度の温度依存性からは室温付近を境とした活性化エネルギーの変化が報告されているが、本研究の結果では室温から低温領域にかけてポテンシャル曲線のエネルギー障壁に変化はみられなかった。このことから、マイクロ波電導度にみられる活性化エネルギーの変化は構造相転移のような結晶全体にわたる現象ではなく、極微量の不純物や局所欠陥等に起因するものであることが示唆される。 さらに、伝導経路の方向に3倍の超周期をもつホーランダイト型化合物K_x(Mg,Sb)_8O_<16>の場合には結晶学的に等価でない2種類の空隙が生じるため、空孔の数とイオンの数との間の関係がK_x(Mg,Ti)_8O_<16>の場合よりも複雑となるが、この物質についても適用可能な解析方法を検討した。
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