研究概要 |
イオン導電体の原子レベルにおける構造データとマクロな特性としてのイオン伝導性との間の関係を定量的なレベルで明らかにすることを目的とし、Rbを可動イオンとするホーランダイト型化合物Rb_xMg_<x/2>Ti_<8-x/2>O_<16>(RMTO)を対象とし可動イオンの分布状態やエネルギー環境の変化を調べた。250K、200Kおよび150Kの各温度において単結晶X線回折強度データの測定を行い構造パラメータの解析を行った。確率密度関数(Probability Density Function : PDF)の非調和性を考慮するためRbイオンの原子変位パラメータ(Atomic Displacement Parameter : ADP)に3次の項まで導入した。さらに、PDFから熱振動による影響を除去するため、これを一粒子ポテンシャル(One-particle Potential : OPP)に変換した。得られたOPP曲線からイオンのホッピング過程のエネルギー障壁値を見積もったところ、250Kでは約260meV,200Kおよび150Kでは約270meVという値が得られた。すなわち、今回測定した温度範囲においては可動イオンのエネルギー環境を大きく変化させるような相転移は存在しないことが判明した。なお、既に行っている室温での測定データからはADPに4次の項まで導入したOPP曲線から140meVという値が得られている。今回の低温領域での測定データではADPに4次の項を導入するといずれもパラメータが正常に収束しないため、室温のデータとの直接的な比較は困難であった。従って、RMTOについてOPPの温度依存性を議論するうえではむしろ室温より高い温度領域での測定がより有効であることが示唆された。
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